プラスチックごみ焼却処理の仕組み

プラスチックはあらゆる日用品・食品のパッケージに使われており、日常生活のなかで避けられない素材です。しかし、近年、こうしたプラスチックがごみとなり、マイクロプラスチックや海洋汚染といった環境問題を引き起こしています。

プラスチックごみは、日本ではどのように処理されているのでしょうか?

東京23区での取り組みについて調べました。

プラスチックの処理

東京23区では、プラスチックの処理方法は大きく2通りあります。ひとつは、可燃ごみとして焼却すること。区や東京二十三区清掃一部、東京都が協力して可燃ごみとしてプラごみを処理しています。(プラスチックごみは2008年4月から可燃ごみとして回収されています。)

もうひとつは、リサイクルです。こちらは民間の事業者によって行われています。

世田谷清掃工場を参考に、プラスチックがどのように焼却されているのか見ていきましょう。

プラごみ焼却処理の基本ステップ

大まかなステップは下記の通りです。

  1. ごみを収集する
  2. 破砕する
  3. 高温で燃やす
  4. 排ガス、スラグ(焼却されたごみからできる人工砂)の処理

1) ごみを収集する

収集車が集積場から可燃ごみを集めて、清掃工場に入ってきます。ごみは収集車から直接、「ごみバンカ」というごみの巨大プールに落とされます。

収集車がごみバンカにごみを落としているところ

2) ごみを燃やしやすいサイズに破砕する

ごみバンカからごみをクレーンで掴み取り、破砕機に入れてごみを破砕します。破砕されたごみは、破砕ごみバンカに貯められます。

3) 高温で燃やす

破砕されたごみをガス化炉で燃やします。500度以上に加熱し、ごみを熱分解して可燃性ガスとチャー(炭化の物質)にして、燃焼溶融炉に送ります。燃焼溶融炉では、さらに燃やして1300度でドロドロに。これは、灰も溶かす温度だそうです。最初は都市ガスを燃料として燃やしますが、そのあとはふつうに空気のなかの酸素を使って燃やすとのことです。

 4) 排ガス、スラグの処理

排ガス

ダイオキシン類等を含んだばいじんは、ろ過式集じん機できれいにします。ここで、99.99%のばいじんが取り除かれます。そのあと、排ガス洗浄処理装置、触媒反応塔を通って、きれいになった空気が煙突から排出されます。

また、排ガスの熱は発電に使われています。発電量は最大6750kw。このうち1/3は清掃工場の施設で使われており、のこりの2/3は電力会社に販売しています。

スラグ

ごみを焼却溶融炉で溶岩状にし、水槽で冷やし固めると「スラグ」ができます。黒い砂つぶのような物質です。無害化されているので、建材としてアスファルトやコンクリートブロックの骨材として使うことができます。

ごみの容量は最初の1/40程度になります。おおよそ45リットルのゴミ袋一杯分のごみが、500mlペットボトル半分ちょっと程度の大きさになり、非常にコンパクトになります。

ハイテクな東京23区のプラごみ処理

以上のように、東京23区ではプラスチックは焼却されたあと、空気は無害化されて外気に、スラグは建材へとリサイクルされています。焼却の際に発生する排熱は発電に使われており、エネルギーを無駄にしない工夫がなされています。

  • 空気を使って燃やしており、大量の燃料は不要。
  • スラグは建材として再利用される。
  • 排ガスがもつ排熱は電気エネルギーに変換され、清掃工場の運営に使われたり、電力会社に販売されたりしている。
  • 排ガスはろ過式集じん塔などで無害化したあと外気に排出されている。

安全にプラごみ処理に必要なごみ収集機能

東京23区で出る一般プラスチックごみは、自然に負荷をかけない形で処理されていると言えそうです。ここでの重要なポイントは、ごみ収集の機能です。

東京は世界のなかでもトップクラスに清潔な都市と言われており、道にはごみがほとんど落ちていません。

家庭ごみ回収の事業者(東京23区)、道路清掃の事業者(東京都建設局)、また、市民側のポイ捨てへのマナーへの意識の高さが合わさって、東京の高いごみ収集レベルを実現しているようです。ごみが海に漂流したり、山に捨てられる前に、自主的に回収しきっている状態です。

まとめ

プラスチックは、しかるべき方法で処理されている限りは、有害な物質ではないといえます。しかし、処理するためには、ごみ回収事業者、路上清掃の事業者、清掃工場といったインフラが整っていることが必要です。

現状、東京では政府の徹底的な管理のもと、一般のプラスチックは安全に使われていますが、個人で処理しにくい素材であることを考えると、負荷が高い素材であると言えそうです。

次は地方のプラごみ処理の実態についても調べて生きたいと思います。

参考:

世田谷清掃工場
所在地:東京都世田谷区大蔵一丁目一番一号
見学した日:2018年12月15日

Related Articles

スキーもキャンプもスポーツも!「自然を楽しむ権利」を大切にするスウェーデン

私有地への侵入や通行には所有者の許可が必...
Read more

科学の力で排気CO2を鉱物に変えてしまうアイスランドの地熱発電

北欧の国、アイスランド。知っているようで...
Read more

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

X