菜の花とひまわりをとことん活かす、淡路島のエコなサイクルモデル

国生み神話の舞台として知られる兵庫県・淡路島。関西では京阪神からアクセスの良い定番の観光地です。農業も盛んで、日本有数の玉ねぎの生産地としても知られています。海に囲まれた絶好のロケーション、美しい田園風景、明石海峡大橋によって陸路での神戸への良好なアクセス……、観光によし、住むにもよしな島です。島といっても、シンガポールや東京23区と同じくらいの大きさなので、循環経済を生むには十分、むしろ島全体でと考えるとかなり大きな規模の取り組みでないといけないくらいのスケールです。

さて、淡路島では、さまざまなエコな取り組みが行われています。そのなかでも今回は洲本市を中心とした「なのはな・ひまわりエコプロジェクト」を紹介します。

観光資源でもあり、人々の暮らしを豊かにする菜の花やひまわり

菜の花

菜の花といえば、なにを思い浮かべますか。黄色い花、菜種油……、そして歴史小説が好きな人は、司馬遼太郎を想起する人も少なくないかもしれません。司馬遼太郎の命日は菜の花忌と呼ばれ、その代表作に『菜の花の沖』も挙がります。さて、この『菜の花の沖』は、淡路島の廻船商人である高田屋嘉平が主人公です。淡路島には、広大な菜の花畑があり、島のあちらこちらでも菜の花を目にすることができます。春の訪れを告げる愛らしい花は、淡路島と関係の深い花です。

春には菜の花、夏にはひまわり。淡路島には黄色い花がよく似合います。重要な観光資源でもあり、淡路島に暮らす人々を少し豊かにしてくれる花たち。休耕地などにも花を植えて、さらに菜の花やひまわりを見て楽しむだけではなく、資源循環させようとする取り組みが進んでいます。

「なのはな・ひまわりエコサイクル」の仕組み

菜種

種まき、種の収穫

種をまき、花が咲いたら、時期を待って種を収穫します。菜の花は5〜6月、ひまわりは8〜10月が種の収穫シーズンです。コンバインという農業機械を使って、プロが洲本町内の種を収穫します。

種の乾燥と分類

種を収穫したら、その日のうちに工場に集めて、乾燥させます。これらの種は、最終的に油を絞り出すので、種の中に水分が残らないように十分に乾燥させる必要があるそうです。乾燥が終わったら、ごみや土、小石を取り除きます。

油の圧搾

乾燥と分類が終わった種は、加熱された後に、専用の搾油機で圧搾されます。焙煎から最終的な油のろ過までには、さまざまな工程があり、約10日がかかります。高品質な一番しぼりだけを出荷します。この圧搾で残った絞りかすは、肥料製造に使われたり、畑に撒いて良質な土壌づくりに生かします。

なたね油、ひまわり油が食卓へ

栄養豊富ななたね油は、料理に最適。揚げ物にも炒め物にも活躍してくれます。ひまわり油はトーストやドレッシングなど、生食でおいしく食べられるとのこと。この油を使うことも、プロジェクト参加へのひとつの関わり方です。

廃油をバイオディーゼル燃料へ

洲本市は市内全域で食用油の廃油回収を行っています。集められた廃油から市内の精製設備でバイオディーゼル燃料を製造します。バイオディーゼル燃料は、石油の代わりになる燃料として期待されており、ディーゼル燃料と同等に扱える燃料です。

このバイオディーゼル燃料は、コンバインやトラクターといった農業機械や、市内を走っている「菜の花バス」に使われています。菜の花バスは、市のレジャー複合施設の送迎に活用されていて、市民からも愛されています。

行政だけではなく、市民が参加できる取り組み

地域内でエコサイクルをつくりだすこのプロジェクトは、非常に洗練された仕組みです。観光資源がある場所だけに、観光一辺倒に注力してしまいそうですが、洲本市は地域資源、地域経済の新しいあり方のモデルケースになっています。

なによりも優れているのは、市民がさまざまなフェーズで関われる余白があることではないでしょうか。菜の花を植えたい人には、市役所などで種をもらえますし、ひまわり油は石けんに製品化されたり、なたね油は食用油などに使われたりしています。もちろん廃油提供、ひいては花畑を楽しむことも、このプロジェクトへの関わり方と言えます。 洲本市だけではなく、淡路島では、さまざまなエコなプロジェクトが進行しています。近郊の方は、ぜひ週末に訪れてみてください。「なのはな・ひまわりエコプロジェクト」について、もっと知りたい方は、こちらへ。

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