「一足買うと、もう一足を貧困国へ」で有名になったTOMSの新しいエシカルとは

「TOMS」といえば、エシカルな取り組みで広く知られている靴メーカーです。消費と社会貢献が結びつく取り組みだけが魅力ではなく、プロダクトそのもののシンプルなデザインとバリエーションにファンも多いブランドです。今回は、新しいフェーズに突入したTOMSの取り組みを紹介します。

TOMSを有名にした「ONE FOR ONE」キャンペーン

Photo by Tyler Nix on Unsplash

TOMSを一躍有名にしたのが、「ONE FOR ONE」キャンペーンです。ユーザーがTOMSの靴を1足買うと、TOMSは途上国の子どもに1足を提供します。そのシューズは、支援先の環境に配慮してデザイン、生産されているTOMSオリジナルの新品シューズです。これまでで7500万足を提供してきました。多くの途上国では、裸足で生活していることが、感染症や怪我の原因になっています。それを解決することが、TOMSのミッションでありつづけてきました。

その後、同様の仕組みで、眼鏡や水など、さまざまなリソースを提供する取り組みも行なってきましたが、TOMSの取り組みには批判も少なくありませんでした。たくさんの靴を提供することで、現地のビジネスの成長や消費を阻んでいるのではないかという意見です。もちろんTOMSの取り組みが大きな成果を残したことは間違いありません。しかし、本当にサステナブルな形かどうかには議論の余地があるかもしれません。

これからのTOMSは「STAND FOR TOMORROW」

そんななか、TOMSが新しいキャンペーン「STAND FOR TOMORROW(未来に向けて立ち上がろう)」をはじめました。TOMSのWebサイトにアクセスすると、まず6つの社会課題に対する「Stand(態度)」を選ぶ必要があります。

次の6つからあなたが支援したい社会課題を選びます。

  1. 「GIVING SHOES(靴の提供)」
  2. 「ENDING GUN VIOLENCE(銃犯罪の終り)」
  3. 「SAFE WATER(安全な水)」
  4. 「EQUALITY(平等)」
  5. 「MENTAL HEALTH(精神的健康)」
  6. 「THE HOMELESS(ホームレス)」

課題を選ぶと、初回だけディスカウント特典があります。そして、購入すると、自分が選んだ分野に支援が行われます。TOMSは各分野に「Giving Partners」という支援組織と提携しており、その組織をサポートする形で支援が行われます。

選べる支援が消費者の意識を変える

Screenshot by toms.com

靴を買うと、半ば自動的に靴が途上国に行われるというONE FOR ONEの取り組みは、現地の支援になるものの、消費者の意識そのものを変えるまでに至らないかもしれません。途上国も変わらなければなりませんが、本当に変わらなければいけないのは、私たち消費者かもしれません。

STAND FOR TOMORROWでは、消費者が支援に対して、主体的に意思を表示することになります。購買と支援がより深く結びつき、購買体験がまったく異なるものとなるでしょう。途上国を支援するだけではなく、消費者の意識を変えていくという試みは、これからのECをはじめとした小売業の新しいモデルを示しています。

何よりONE FOR ONEが始まったころとは、時代も変わりました。多くの企業が環境に配慮し、まちでSDGsの文字を見ない日はなくなりました。消費者がより積極的に国際支援や社会課題の解決に関わろうとしている今にふさわしい取り組みが始まっています。特筆すべきは、支援先が途上国だけではなく、銃社会や格差社会などの「自分たちの社会課題」にも及んでいることではないでしょうか。日本でも同様のモデルが登場する日が楽しみです。

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