200万本以上の植樹で故郷の森を蘇らせたブラジルの写真家夫婦

環境問題なんて、大きすぎて、自分にはなにも変えられない。そんな風に思ってしまうことはありませんか。人間ひとりの力なんて、ちっぽけだなと思ってしまったとき、この夫婦のことを思い出してください。一人ひとりにできることがあると気付かされる、ブラジルの写真家夫婦が森を蘇らせたエピソードです。

戦争に疲弊して、故郷に帰った夫婦

Photo by Instituto of Terra

ロバート・キャパらが創立した世界最高峰のフォトグラファー集団といえば、マグナム・フォト。かつてマグナム・フォトに所属し、世界的な写真家であるセバスチャン・サルガドがこの話の主人公です。

彼は1990年代にルワンダ大虐殺の取材で、凄惨で暴力的な現地を目の当たりにし、精神的にも肉体的にも疲弊しきっていました。そして、ルワンダでの仕事を終えた後、妻であるレリア・ワニック・サルガドとともに、故郷であるブラジルのミナスジェライス州に戻ることを決めました。

セバスチャンの父が経営していた農園跡に帰郷した夫婦は、かつて緑豊かだった熱帯雨林が伐採され、不毛の地になっていたことにショックを受けます。このときの心境について、セバスチャンは「すべてが破壊され尽くしていて、私と同様に、この土地も病んでいた」とガーディアン紙に語っています。当時は広大な敷地のたった0.5%しか木がなかったといいます。

不毛な故郷を蘇らせようとする不屈の精神

植樹前の様子 Photo by Instituto of Terra
植樹後の様子 Photo by Instituto of Terra

ショックに屈することなく、妻であるレリアは、木を植えて、かつての森を取り戻すことを思いつきます。彼女はかつての緑が生い茂る姿を取り戻せると信じていたそうです。20年をかけて、200万本を超える植樹を行い、ドセ川渓谷に広がっている1750エーカーを緑に満ちた土地に戻しました。鳥や虫、動物などの生態系も急速に回復しました。

単純に植樹をしたわけではありません。セバスチャンは、「その土地に自生している木でなければならない。同じ地域の木の種子や苗を集めて植えることが大切で、そうしなければ、森に動物たちは帰ってくることはなく、生態系が沈黙した森になってしまう」と述べています。

どれほど緑が戻ったか、写真より雄弁に語ることは難しいでしょう。信じられないことですが、土地は完全に息を吹き返しました。彼らは植樹に着手すると同時に、協力者を募り、ファンドレイジングを実施し、1998年にInstitute of Terraという環境団体を立ち上げました。

Instituto of Terraは、ドセ川渓谷のサステナブルな保全と開発を担い続けています。

「木を植える」という環境問題へのシンプルな答え

Photo by Sebastião Salgado

セバスチャンは、2015年、ガーディアン紙にこのように語っています。「おそらく私たちは気候変動に対する解決策を持っています。CO2を酸素に変えてくれる存在、それは木です。私たちは森を植えなおしていく必要があります」

もちろん国際的なCO2排出量削減の取り組み、SDGsをはじめとした企業の取り組みも大切ですが、セバスチャンは「木を植える」というシンプルで地道な行為が答えだと言っているわけです。

他でもないセバスチャンの言葉だからこそ力があります。都市部に住んでいると、木を植えるという行為はとても遠いことのように感じますが、この記事を書いている今もアマゾンの火災はどんどん広がり、地球の酸素を支えている森林資源が消えていっています。決して他人事ではありません。(ちなみに、サルガド夫妻の土地は大西洋岸森林と呼ばれるアマゾンと並ぶ大森林の一部であり、地球の酸素供給を支えています。)

私たちが今すぐに木を植えはじめることは難しいのかもしれませんが、地道なことの積み重ねが大きなインパクトを生むことをサルガド夫妻の20年間が教えてくれます。

Instituto of TerraのストーリーはGoogle Arts & Cultureでも取り上げられています。

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